カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
流されるように婚約した私の覚悟を何度も確認してきた慈英。

それは副社長としての慈英、ミサキ商事を引っ張っていく立場ある慈英を支えていく覚悟でもある。

秘書になって、近くで副社長をずっと見てきた。

年配の役員が多い世界で怯むことなく意見する姿や20ぐらい上の部長と渡り合う姿も何度も見てきた。

そんな気を張り詰めた世界で仕事をする慈英の立場は想像以上だった。


「兄貴の寛げる場所は心菜の隣だけ。わかってるだろ?」


寛げる場所。

張り詰めた世界で仕事をする慈英が寛げる場所は私の隣だけ。

目を閉じて思い出すのはリビングで寛ぐ慈英、ベッドで気持ち良さそうに眠る慈英、キッチンでちょっかいを出す慈英…………いつも笑顔を浮かべて過ごしている姿だ。


「あー、そろそろ時間切れ。」


時間切れ?

賢の意味不明な言葉に首を傾げた。

夜中に鳴るインターホンの音にビクリとしてしまった。


「兄貴が到着。」


誰も口を開かないでいる中で賢だけが楽しそうに玄関を開けに向かった。

賢に続いて部屋に入ってきたのは慈英だ。

同期の前でも不機嫌さを露わにしている。
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