カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
無言の世界を打ち破ったのは慈英だった。


「言いたいことは言えよ。」

「…………。」

「心菜、勝手に離れるなよ。」

「…………。」

「俺が嫌になった?」

「…………。」

「結婚を辞めたくなった?」


声を震わす慈英を見上げた。

すれ違う人が何事かとちらちらと見てくるが、気を配れる状態ではない。

今にも泣き出しそうな慈英が足を止めて目を合わせてくる。

潤んだ瞳が縋るように見つめてくる。


「心菜は後悔してる?」

「してないよ。」

「俺の何が嫌?」

「相談ぐらいして欲しかった。」

「相談?」


理解できない顔を向けてきた。

私は思っていた事を吐き出し始めた。


「結婚式に対する温度差を感じてた。」

「温度差?」

「私は結婚式が凄く楽しみで、慈英と一緒に作り上げていきたいと思ってた。」


「俺も楽しみにしてる。」

「でも決め事は慈英が一人で決めて、私は頷くだけ。ドレスも本当は慈英に相談もしたい。」


子供染みてるかもしれない。

我儘なのかもしれない。

慈英も暇じゃないし、相談する時間が惜しい気持ちも分かるけど…………。


「やっぱり二人で相談して作り上げたい。」
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