カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
人目も憚らず、慈英が私を抱き寄せた。

ぎゅっと抱き締める腕に力が込められていく。


「ごめん、心菜の気持ちが分かってやれてなかった。」

「私も慈英の考えてる事を理解できてなかった。賢に言われて気付かされた。」

「賢?」

「うん。慈英も私と同じぐらい結婚式は楽しみにしてるって。私への負担を減らす為に一人で頑張ってたって。」

「…………。」

「ドレスも私の気持ちが一番なんでしょ?」


緩まる腕に慈英を見上げた。


「いつも私を想ってくれての行動だった。違う?」

「そのつもりだった。けど、逆に心菜を傷つけてるとは思ってもいなかった。」


そう言った慈英の顔は後悔が滲み出ていた。


「もう一度、決め直すか?今度は二人で。」

「ううん。慈英の気持ちも伝わったし、私達の間に結婚式への温度差なんてないよね?」

「逆。寧ろ、俺の方が楽しみで待ち遠しく想ってる。」

「それはない。私も凄く楽しみだし、待ち遠しいよ。」


言い合う私達は側から見たら、仲のいいカップルに見えるかもしれない。

今回は賢に感謝だ。

ちゃんと慈英は想ってくれている。

副社長としてだけでなく、私の事も考えてくれている。

それに岬という家に嫁ぐ現実を改めて教えてもらった。

普通の家で育った私が岬という大企業の嫁になる現実を受け止めていかなければならない。

そう感じた。
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