カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
ウエディングスタッフの案内で式場の扉の前で待機する。

合図と共に大きな扉が全開になる。

今まで感じたことのない緊張に包まれる。

視線が私と父に集中する中、腕を組んでバージンロードを一歩一歩進んでいく。

静かなチャペルが一層緊張を煽っているように思う。


「心菜。」


緊張する私に掛けられた父の小さな声に、少し顔を上げれば、ベール越しに慈英と目が合う。

大きく深呼吸をして、父から慈英の腕に組み替えた。

じっと私を見つめたままの慈英とベール越しに視線が交わる。

お互いに緊張しているのだろうか。

動かない慈英。

慈英にぎこちない笑みを浮かべれば、我に返ったかのように動き始めた。

神父の前に立つ私達はマニュアル通りに式を進めていく。

緊張してる私にはマニュアルは大助かりだった。

二人で決めた結婚指輪を交換する。

嵌められる指輪、そして嵌めていく指輪をベール越しに見つめた。

慈英の手で私のベールが上げられていく。

顔を上げれば視線が絡まり、近づく顔に目を閉じた。


「心菜、綺麗だ。」


甘い囁きと触れるキスが落ちてきた。
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