カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
薄暗い映画館に岬さんと並んで腰掛ける。

なぜか繋がれた手から顔へと視線を上げていく。


「岬さん、手を。」

「嫌?」

「友達でしょ。」

「俺は猛アタック中。」


ヒソヒソと小声で話す。

自然と顔を寄せ合ってしまうのは映画館という場所柄だろう。


「友達でも手は繋ぐよ、雨宮さん。」

「でも。」

「あっ、始まる。」


それ以上は言葉に出来なかった。

結局、手を繋いで映画を観ることになった。大きな温かい手で包み込まれているようだ。

岬さんが『観たい』と言っていた映画はラブストーリーだった。

意外な感じがした。


『好きだ』

『…………』

『ずっとずっと好きだった』


映画の中のセリフにキュンとする。

同時に繋がれた手に力が込められて、隣の岬さんを見上げた。

視線が交わる。

耳元に近づく顔に体が動けないでいた。


「好きだ。」

「…………。」

「ずっとずっと好きだから。」


鼓動が早鐘を打つ。

ドキドキ感が半端ない。

離れていく岬さんと視線が交わる。

本当に落とされそうだ。

私の心に入り込んで来る岬さんに、抗う術を知らなかった。
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