カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
映画が終わっても離されない手。

繋がれた手のまま、岬さんが予約していた店に入っていく。

窓側の席に案内された私達は向かい合って座った。


「雨宮さん、映画はどうだった?」

「面白かったです。でもラブストーリーが好きなんて意外でした。」

「ははっ、そうかな。」

「はい。」


窓の外には綺麗な夜景が見える。

すっかり夜の闇へと変わっていた。


「イタリアンで良かった?」

「はい。」

「敬語はなしで。今は友達タイムでしょ。」

「あー、でも、岬さんは年上だし。」

「友達だから。」

「あー、はい。」

「ほら敬語。」

「あっ、つい、うん。」


クスクスと笑う岬さんに釣られて、私もクスクスと笑ってしまった。


「なんか友達なんて可笑しいですね。」

「なら恋人になろう。」

「そんなに彼女が欲しいですか?」

「心菜が欲しい。」


突然呼ばれた名前にドキッとした。

固まる私に追い打ちを掛けるように岬さんが囁く。


「心菜が欲しい。」
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