カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
「心菜。」

「何ですか?」


優しい声色が電話越しに聞こえてくる。

慈英も相当参っているのが伝わってくる。

私さえ過去を気にしなければ、慈英は悩まなくて済むだろう。

でも気になって仕方ない。

沈黙の慈英に問い掛ける。


「岬さんは何人ぐらいと付き合いました?」


これぐらいの意地悪はしたい。

敢えて…………昔のように呼んでみた。


「岬さん?」

「…………ごめん、言えない。」


これが答えだ。

少なくない。

多くの女性と付き合ってきたと言っているのだ。


「そっか、わかりました。」


またもや沈黙が流れる。

唇を噛み締めて、心を落ち着かせる。

大きく深呼吸をしてから慈英に話し掛けた。


「間違ってたかな?私の選択は。」

「…………。」

「カフェで見かける岬さんを…………勝手に美化してたみたい。」

「…………。」

「大人で……優しそうで……雰囲気も柔らかくて……紳士なイメージでした。」
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