カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
慈英の低い声が聞こえてくる。


『イメージを植えつけた?』


「誰だって、好きな女の前では猫を被りたいだろ。」

「…………。」

「好きな女にはイメージを良く思われたい。だから猫を被っただけだ。」

「尚更、上手くいかない。」

「もう遅いって伝えただろ。」

「…………。」


冷静な慈英の声に口を噤んだ。


「過去は話せない。心菜に嫌われたくないし、軽蔑なんてされたくない。」

「それって……遊んでたって言ってる?」

「兎に角、心菜は別だ。」

「別?意味がわからない。私は特別になれるほどの女じゃない。」

「それは俺が決める。心菜の魅力は他の女にはないモノだ。」


意味がわからない。

他の女にないモノって何?

私は普通の女子大生だ。

何も特別なんてない。


「心菜は俺に媚びた事ないよな?」

「それは私だけじゃないでしょ。」

「俺の容姿、俺の家柄にもギラついたりしない。」

「それも私だけじゃない。」

「優しい心遣いができる。」

「そんなのは慈英も知らないでしょ。」


つい慈英と呼んでしまっていた。
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