カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
ふと隣の席の人と目が合う。


「ミサキ商事の副社長って、本当にカッコいいね。」

「モテそうだよね。」


初めての会話が副社長のモテ話になるとは。

私も彼女の意見に同意だ。

今日の慈英は本当にカッコいい。


「中田鈴乃(なかた すずの)です。これから宜しくね。」

「雨宮心菜です、宜しくね。」


初めての社会人の友達だ。


「副社長に会える機会なんて、滅多に無さそうだね。」

「あー、うん。」

「一緒に働けたら最高なのに。もしかしたら恋人になれるチャンスだってあるかもしれないし。」

「…………恋人。」

「まあ、雲の上の存在よね。」


鈴乃の言葉が胸に突き刺さる。


『雲の上の存在。』


本当にそうだ。

なのに、私は副社長の彼女だ。

副社長である慈英を見た私の心が、今までに感じた事のない不安に襲われた。


「雨宮さん?」

「へっ?」

「ははっ、研修の話が始まるよ。」

「あっ、うん。」


意識が他へ飛んでいた私は現実に戻された。

ひよっこの私と副社長の慈英。

全然釣り合わってない。
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