カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
昨日の出来事が頭を過る。


『会社では秘密にして!』

『秘密にする理由は何だ?』

『コネ入社だと思われたくない!』

『コネ?』

『だって副社長の知り合いなんて知られたら、周りから色目で見られそうだし。』


昨日のリビングでの言い合いを頭の中に浮かべる。


『色目?』

『だから…………明日からは声を掛けないで。』

『はっ?』

『私と慈英は新入社員と副社長なんだから。変な噂とか立てたれたら嫌だし。』

『嫌?』


どんどんの急降下していく慈英の機嫌。

声も明らかに不機嫌さを露わにしている。

この時の私は自分の事が噂になるのが嫌だった。

今考えると、副社長である慈英も噂なんて立てられたら迷惑だろう。

新入社員の普通のOLとの噂なんて…………きっと迷惑だ。

社員の憧れの的。

そんな彼が私と噂なんて迷惑に違いない。

だから昨日の言い合いは無駄じゃなかった。

もし万が一にも別れたら…………噂になっていれば私は会社にもいられなくなるだろうから。
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