カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
入社して1週間が過ぎた。

会社で慈英と顔を合わせる日は一度もない。


「雨宮さん、おはよう。」

「おはよう。」


2ヶ月は基本研修だ。

私は大勢の同期と研修の日々を送っている。


「雨宮さん、おはよう。」

「おはよう。」


知り合いになった同期と朝の挨拶を交わしていく。

その中に一人、目立つ存在の男がいる。


「心菜、おはよう。」

「おはよう。」


私を名前で呼ぶ男だ。


「岬くんと雨宮さんは知り合い?」


まあ聞かれるだろう。


「そう。」

「大学…………ではないよね?」

「違う。秘密の知り合い。」


楽しそうに話す岬。

彼は慈英の弟だ。

岬賢(みさき けん)、見た目は血筋なのかスーツの似合うイケメンだ。

慈英より少し背が高く、若い感じから軽い感じが漂っている。


「秘密の知り合い?」


同期の視線が集まる。

私の肩に手を置いた賢に顔を向ければ、にやにやと笑う賢と目が合う。


「心菜、秘密だよな?」

「…………。」


返す言葉が見つからない。
< 51 / 216 >

この作品をシェア

pagetop