カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
そもそも賢が私に変な事を言うから悩んでしまっていたのだ。

張本人の賢は知らん顔で会話を楽しんでいるようだった。

私にあれだけの話をしておいて、自分は蚊帳の外みたいな態度に腹が立つ。


「賢とは行きたくない。」

「はあ?何を怒ってんだよ。」

「…………。」

「彼氏と喧嘩でもしたか?俺のせいじゃないから。」


ムカつく。

賢が『慈英の女癖の話』とか、『慈英とは上手くいくのか』とか、『本当に幸せなのか』とか聞いてくるから。

悩んでしまっているのだ。

それなのに知らん顔で『彼氏と喧嘩したのか』なんて聞いてくる神経が分からない。


「雨宮と賢は喧嘩か?」

「さあ?心菜が勝手に怒ってるだけだろ。」


前に座る匠海と賢が話している。


「心菜、行こうよ。」


結衣が誘う。

結衣は皆で出掛けたいのだろう。

賢がいるから。

頼み込む結衣に折れるしかない。


『私って本当に押しに弱いな。』


そう思いながら頷いた。
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