カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
何で驚いているのかが分からない。


「兄貴は本気?」

「はあ?」

「心菜との結婚。」

「当たり前だ。心菜の親にも、俺の親にも挨拶済みだ。」

「まだ若すぎだろ。」


賢は以前私に言った。

大学卒業したばかりの私が副社長の嫁としてやっていけるのか。

女癖の良くない慈英は他の女性に乗り換えるかもしれないと。


「俺は若くない。年の差は埋めれないから仕方ないだろ。親父にもお袋にも結婚の許可は貰ってる。」

「でも兄貴は女癖が…………。」


慈英の腕が伸びてきて強めに抱き寄せられた。

思わず体勢を崩した私は寄り掛かってしまっていた。


「過去だ。賢、心菜の前で口にするな。」


怒りの篭った声が頭上から聞こえた。

リビングの空気が一瞬で変わった。


「賢、心菜に何か言ったのか?」

「…………。」

「アメリカにいた頃の俺とは違う。賢、変な事を吹き込むのは許さない。」


ずっと昔に慈英は言った。


『過去は言えない』


それほど遊んでいたのかと思ってしまうが、今の慈英からは想像出来ないほど、一途な男に変わっているのを知っている。
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