カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
私を抱き寄せる腕が強くなる。

慈英の不安が現れているのだ。


「明日は同期と遊びに行くね。慈英、ご飯はお願いしてもいい?」

「ああ。パスタでいいか?」

「うん。お昼はパスタ以外にするよ。」


普段通りに話し掛ける。


「明後日から実家だね。家には連絡してあるから。夜は豪華にするって。」

「普段通りでいいのに。」

「慈英が来るから張り切るみたい。」


腕の力が少しずつ弱まっていく。


「夕食はまだ?温めようか?」

「頼む、着替えてくる。」

「うん。賢は何か飲む?コーヒー?」

「うん。」


賢にも普段通りに話し掛ける。

2人の嫌な空気を取り除きたかったのだ。


「用意してくる。賢、明日は何時だっけ?」


ソファーから立ち上がり、キッチンに向かっていく。

慈英がリビングから出ていく気配を感じた。


「朝は迎えにくる。」

「面倒でしょ?いいよ、待ち合わせ場所まで行くし。」

「迎えにくる。家で待ってて。」

「賢、ありがとう。」


素直にお礼を言った。

ここで言い合うのは良くない。

キッチンで夕食の用意とコーヒーを淹れた。
< 68 / 216 >

この作品をシェア

pagetop