カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
「まあ、バレたらバレたでいいし。親も公認だし、問題にはならない。」

「うん。」

「そろそろ行く?」

「うん。」


春晴れの中、私達は混雑する高速に戻る事になりそうだ。

隣を歩く慈英を見上げる。


「慈英、疲れるでしょ?」

「ん?心菜と一緒だし、別に大丈夫。」

「慈英は優しいね。あっ、賢が『兄貴も誰にでも優しい』って言ってたな。」

「…………チッ、賢のヤツ。」

「ふふっ、賢から筒抜けだね。」

「チッ、口止めしとくか。」

「なにそれ。」


クスクスと笑ってしまった。

本当に過去は知られたくないらしい。

私は付き合い始めてからの慈英を信じている。


「あっ、これ、美味しそう。」

「まだ食べるの?」

「半分にする?」

「…………これ、ください。」


私に甘い。

そして私も慈英に甘くなる。

手を繋いで仲良く歩く。

ちょっとした事が嬉しいのだ。


「ほら、遅くなるから行くぞ。」

「うん。」


今度こそ、慈英の車で実家へと走り出した。
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