カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
「こちらこそ、心菜で本当に?」


やっと口を開いたのは父だ。

下げていた頭を上げた慈英が父に大きく頷いた。


「はい、心菜さんしかいません。」


父と慈英がお互い視線を逸らす事なく、じっと見つめ合っている。

突然父が深く頭を下げた。


「岬さん、心菜を宜しくお願いします。」

「はい、ありがとうございます。」


今度は2人がお互い頭を下げている。

そんな2人の行動を交互に見る。

私は最初から反対なんてされない事を分かっていた。

父も母も慈英を気に入っている。

そんな事はこの2年で分かっているつもりだ。


「では結婚に向けて進めさせて頂きます。」

「岬さんと心菜で決めて貰えれば。」

「はい。」


清々しい顔で笑みを浮かべる慈英の横顔を見つめる。

今回の帰省の目的が終わったようだ。

やっとコーヒーに口をつける慈英。

ヌルくて不味い筈なのに嬉しそうだ。

それだけ喜んでいるのが手に取るように伝わってくる。


「心菜、帰ったら進めるから。」


満面の笑みを向ける慈英。

私は小さく頷いてみせた。
< 80 / 216 >

この作品をシェア

pagetop