カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する

その後ろ姿を目で追い掛ける。


「雨宮さんも会社だと肝に銘じた行動をお願いします。」

「はい。」

「恵、煩い。早く戻れ。」


不機嫌な副社長の声が飛んできた。

小さな溜め息を零した恵さんが副社長にお辞儀をした。


「副社長、御用の際はお呼びください。ただし、雨宮さんは教育中ですので私をお呼びください。」

「チッ…………。」

「雨宮さん、行きますよ。」

「はい。」


私も副社長にお辞儀をして、恵さんの後をついて副社長室を出た。


「ふふっ、ふふっ、ふふふふっ。」


廊下に出た途端、恵さんが大笑いを始めた。

そんな恵さんを唖然と見ていた。


「見た？兄さんの顔。滅茶苦茶不機嫌だったでしょ。」

「あっ、はい、そうですね。」

「ふふっ、可笑しい。」


大笑いをしながら廊下を進んでいく恵さんを見れば、本当に楽しそうに笑っている。

よっぽど可笑しいみたいだ。


「心菜ちゃんとイチャつくつもりだったのよ、きっと。」

「いや、それはないかと。」

「絶対に秘書にすればイチャつけると思ってた。兄の行動なんて御見通しよ。」


勝ち誇ったような笑みを浮かべる恵さんの方が上なのかもしれない。

そんな風に見えてしまう。