カリスマ副社長はフィアンセを溺愛する
二人で廊下を歩き、エレベーター待ちをする。


「恵、忙しそうだったか?」

「はい。」

「無理に一緒に来る必要ないだろ。」

「いえ。秘書と二人で出掛けて、社員の噂になると困ります。」

「ふ〜ん、困るね。」


エレベーターに二人で乗り込む。

誰もがいないエレベーターで副社長の前に立つ。

ふと手が繋がれて驚きに振り返る。


「副社長。」

「ん?」

「ここは会社です。秘書に触れるのは禁止です。」

「ん?」


聞き流されている。

誰かに見られたら大変だ。


「副社長。」

「ん?」


ちょうどエレベーターが停止した。

繋がれていた手が離れていく。


「おっ、間に合った。」


エレベーターに乗り込んで来たのは社長秘書の武内さんだ。


「お疲れ様です。」


秘書課の上司である武内さんに頭を下げる。


「チッ…………。」


背後から舌打ちが聞こえて副社長の方を振り向いた。


「慈英、一緒に行くから。」


今度は武内さんを見た。


『慈英?』
< 96 / 216 >

この作品をシェア

pagetop