再会は突然に

彼の場合

よし、とりあえずこれで一区切りか。

そう考えながら、2週間ほど仕事場になっていたビルのエントランスに設けられた椅子に座り、ふぅと小さく息を吐いてスケジュール帳をめくった。
約一ヵ月前から本格始動した共同開発の案件と、来年春以降設置予定の支社案件で手一杯だったが、年末近くになってやっとひと段落ついた。

といっても、この後も共同開発の件で会議だし、その後は支社立ち上げの件で会わなくてはいけない人のアポも数件入っている。

本来なら会議もアポもなかった。無理やり日本に仕事を作って3日の弾丸出張を決行し、彼女に会いに来たのだ。
まさかこの会社に来ることになるとは思っていなかった為、帰国のことは彼女に黙ってサプライズしようと考えていたのに朝からここで仕事をする羽目になってしまった。

もしかしたら風の噂で、俺が来ていることが彼女に伝わっているかもしれない。それはそれで仕方ない、とは思うが今となってはどうしようもない。

とにかく。
滞在期間も短いからさっさと仕事を終わらせて、彼女を驚かせて一緒に過ごしたいと思っていた。
しかしそれを邪魔するようにポンポンと仕事が入って来る。

いや本当に、会議にしろ、アポにしろ、タイミング考えろよ。
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