再会は突然に
オン仕様の営業スマイルで快く引き受けたが、内心では悪態しかついていない。
確かに仕事で来ていることになっているのだから、仕事に文句をつけるなどあり得ないが、何もここまでつめこまなくてもいいだろ。


「はぁ」


何時終わりか考えたくないと言わんばかりに大きくため息をついた時だった。

「古賀さん」とあまり聞き慣れない女性の声で名を呼ばれて、不機嫌であろう顔を引き締め振り返ると見知った人が立っていた。


「お久しぶりです。戻ってきてはったんですね」
「あぁはい、仕事の都合で」
「えらい熱心なことで。ぜひとも見習いたいとこです」


そう綺麗な笑みを浮かべる女性は、確か伊藤さんだったか。
彼女の親友で、一度だけ飲み会の場で言葉を交わした程度。

それでも印象に残っているのは、綺麗な笑みに完璧に隠された裏が見えるからだ。
俺も大概裏がある人間だと思うが、彼女は同等もしくはそれ以上に裏があるのではと思う。

今も綺麗な笑みを浮かべているが、言葉の一つ一つがキツく、褒めているようで皮肉られている気しかしない。
これは、仕事ばかりで彼女を蔑ろにしているだろうと責められているんだろうか。
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