再会は突然に
そう思うが、そんなことを聞くほど馬鹿でもない。
こういうのはスルーするに限る。


「伊藤さんはしっかりされているから見習うも何もないでしょう」
「古賀さんに言われるほどじゃありませんよ」


お互い綺麗な笑顔を張り付けて水面下で探るのも悪くはないが、一つどうしても気になる事があった。


「崎本さんはご一緒ではないのですか?」



10年前手放してしまった愛しい彼女の姿が先ほどから見えなかった。
伊藤さんとは同期の中でも群を抜いて仲が良く、よく一緒に行動すると言っていたからてっきり今もそうだと思っていた。

勤務時間なら単独行動も納得出来るが、今は確かこの社内では昼休憩だ。



「もしかして何も聞いてはりません?」


伊藤さんの笑顔がスッと消えたかと思えば、少し眉間に皺を寄せて俺の方を睨んだ。
この落差に嫌な予感しかしなかった。


「いえ、何も。彼女に何か?」
「あの子今日会社休んでるんです、風邪引いて」


あぁやっぱり嫌な予感は当たった。
しかもよりによって風邪とは・・・。


「風邪、ですか」
「えぇ、連絡入れる元気はあったみたいですけど、その後は一切連絡が来てないんでどっかでぶっ倒れてるかも」
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