再会は突然に
伊藤さんは恐ろしいことを口にしたが、ありえる気しかしなくて態度には出さずとも大きくため息をついた。

それと同時にこの後控えている仕事の数々を心底恨んだ。
仕事を放り出して彼女のところへ行きたいが、それが出来ない立場に嫌気がさす。


「古賀さんはこの後も当然仕事ですよね?」
「えぇ、会議やら何やら詰まっていますね」
「古賀さん、営業スマイル崩れてはりますよ」
「どうぞお察しください」


きっと俺の表情は眉間に皺が寄っているか、それらを通り越しての無表情のどちらかだろう。


「まぁあの子のことは、仕事終わり次第見舞いに行きますんで、古賀さんは仕事頑張ってください」
「・・・頼みました。さっさと終わらせて向かうようにします」
「是非そうしはってください」


にっこりとほほ笑んだ伊藤さんは、「では私はこれで」と言って早々に去って行った。
去っていく伊藤さんの背を送りつつ、俺は手早くスマホを出してラインを立ち上げる。

とにかく彼女に連絡入れておかなければ。
本当は突然彼女の前に姿を現して、驚かせようと思っていたがそれどころじゃない。

労わる内容と見舞いに行く内容をメッセージで送り、この後の予定をもう一度頭の中で反復する。

いかに無駄な時間を作らず、最短の時間で尚且つ最良の結果を残すにはどう動けばよいか。
とりあえず会議からだな、さっさと終わらせてその後は捕まらないように上手く逃げ出さなければ。

そう必死で考えていたせいか、すっかり昼食を忘れてしまったのは言うまでもない。
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