再会は突然に
「へ、だ、大希!?」
「ごめん、勝手に苛立ってた。とりあえず話は後でちゃんとするから」


そう言いながら器用に靴を脱ぎ、扉を閉めて彼女の部屋に入った。
彼女を部屋の奥にあるベッドに静かに降ろし、彼女のおでこに手を当てる。

「ひゃっ」と可愛く悲鳴をあげる彼女に、ガタッと理性の一部が崩れたような気もするが無視だ。


「熱は測った?」
「お昼に一応・・・」


お昼ってだいぶ前ではないか。

そう思いながらサイドテーブルに置かれた温度計を彼女に差し出す。
とりあえず測ってる間に、色々整えなければいけない。

枕元を見れば、溶けているだろう氷枕。
サイドテーブルに置かれているペットボトルは空だから、新しい水分を用意する必要がある。
薬はどうやら病院から処方されたものを飲んだらしく、近くのごみ箱には薬の入っていただろう袋が捨ててあった。

あとは、体の汗を拭かせて着替えさせるぐらいか。
きっとこの一日でだいぶ汗をかいただろう、着替えないと寝苦しいに決まっている。


「はい、とりあえず熱測って。俺は色々用意するから」
「分かった。あの、大希ごめんね?疲れてるのに」
「俺のことは後で心配してくれたらいいから、今は自分のことだけを考えて」


少し目尻を下げて、優しく言えば「ありがとうございます」と何故か丁寧口調で、しかも語尾は消えかかりながら彼女は言った。
< 107 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop