再会は突然に
ダメだ、これ以上ここにいたら考えてしまう。
とにかくここから動かないと・・・。


「風香？」


後ろから聞こえたのは、今一番聞きたくない声だった。
振り返ると、書類を持った大希が立っていた。


「・・・泣いてんのか？」


大希に指摘されて初めて気付いた。
涙を流していたことに。


「なんかあった？」


心配そうな表情が今の私には耐えられなかった。
この表情も「イギリスの大事な人」に見せていると思うと、精神的に限界だ。


「ご、ごめん何でもないから」


走り去る背中に私を呼ぶ声がしたが、振り向きもせず普段は使わない非常階段を無心で降りた。
普段使わないから、息が切れる。

やっと止まったのは総務のある３階。

今は仕事中だと必死に頭を切り替えようとするが、全く上手くいかない。
今までこんな経験がない私は、上手く切り替えられる方法も知らなければ切り抜ける方法も知らなかった。


「も、もしかしたらただの噂話かもしれないし・・・だって確証が得られないし」


なんとか声に出して、自分を落ち着ける。
あと、数時間は出来るだけ考えないようにしなきゃ・・・。

走って乱れたであろう髪を手で直し、平静を保つために深呼吸を繰り返した。
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