再会は突然に
戻った時には、部長はおらず私は空のコップを持ったまま自分のデスクに座った。

すぐさま小声で恵梨が「風香が出てった後、部長呼び出されはったから大丈夫やで。お茶も淹れんでいい言われてるし」と言った。

部長のことだけ言ってその後は特に追求せずに、先ほどと同じように仕事を続ける恵梨を見てありがたく思った。

多分、今追求されたらまた泣いてしまいそうだから。

本当にいい友達を持ったと思いながら部長のコップを給湯室に戻し退社までは仕事にだけ集中しようと改めて心に決め、業務を再開した。



「はぁー・・・」


帰ったきたのは21時前だった。
定時後は会社近くの手頃なイタリアンレストランで、恵梨に給湯室での話を聞いてもらっていたのだ。

恵梨もただの噂話ではないかという意見で、女性にだらしないようには見えないと断言していた。
私も恵梨に同感だが、10年もの歳月が経っていて「もしかしたら」の考えがどうしても頭から離れなかった。

ため息しか出ない私に、恵梨は本人確認を勧めたが「もう少し整理したい」と言って断り、話はそこで一旦終わりとなった。

ゆかりにも報告という形で相談してみたが、実際に本人に聞かない限り真偽は分からないと言われ、整理したいと言って一旦話を終わらせた。
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