再会は突然に
「風香、答えてくれないか」
「え、で、でも大希ってイギリスに大事な人がいるんじゃないの・・・?」


様子を伺いながらそう言えば、明らかに眉間に皺を寄せた大希の表情が目に入った。
どこをどう見ても不機嫌マックスの時の表情だ。
銀縁の眼鏡がキラリと光った気がして、グッと体に力が入る。


「あの、大希?」
「それどこで聞いた?」
「え、会社の人から・・・大希に告白したらイギリスに大事な人がいるって断られたって」


声に出すと、頭の中で噂話をしていた彼女たちの声が再生されて、心臓のあたりがぎゅっと潰される気がした。


「何でそんな話になってるか分からないけど、根も葉もない嘘だからな?告白されたのは確かだけど、普通に無理ですごめんなさいって言ったし」


そう言いながら大希は、重ねていた手を私の頭に移動させて優しく頭を撫でてくれる。
その優しい手に、思わず涙が出そうになる。


「もしかして連絡無視したり避けてたのってさっきの話が原因?」
「う、うんなんか気まずくて・・・」
「会社で泣いてたのも?」
「うん」


肯定だけすると、大希は「あの時追いかけて問い詰めれば良かった」となかなか物騒なことを呟いた。
しかし頭を撫でる手は相変わらず優しくて、大人しく撫でられていることにした。


「10年前、なかなか連絡が取れなくて、会いにいけなくて悪かった」
「それは私だって!」
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