再会は突然に
大希が出してきたのはリボンのラッピングが付いた正方形の小さい箱。

流石の私でも目の前にあるのが何かは分かる。
ただ、まさか自分の身に起きるとはさらさら考えていなかったので、頭は真っ白で言葉なんて一つも出なかった。


「崎本風香さん、受け取ってもらえますか?」


そう言って小さい箱を差し出した大希が優しく微笑んだ。
ふんわりと、包み込むように。


「い、いいの?」
「もちろん、風香が受け取ってくれないと意味がない」


小さい箱を持っても全然実感が湧かず、夢見気分で眺めていると「開けて」と大希に言われ、自分でも分かるレベルで震えている手でゆっくり開けた。

出てきたのはシルバーのシンプルな指輪。
でもよく見ると小さな花のようなものが付いていて、控えめながら美しいと思った。

こ、こんな綺麗な指輪を私に・・・?
大希には失礼だけど、本当に最初から今まで全部夢なんじゃないだろうか・・・。

放心状態の私とは違っていつも通りに見える大希は手早く箱から指輪を出していて、気付けば指輪は私の左手の薬指に収まっていた。


「こんな間際にごめん、でも気持ちをはっきりさせておきたくて。日本に戻ってきたら、改めてちゃんとするから待っててくれる?」
「もちろん、私なんかで良ければ」
「言っとくけど、風香じゃないとダメなんだからな?」
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