再会は突然に
じっと見つめられて、波打つ心臓のバクバク音は余計に増すばかり。
いい加減慣れて耐性を付けなければとは思うけど、昔から慣れることは出来なかったからきっと今後も無理なんだろう。


「仕方ない、そんなに風香が言うなら、今から風香じゃないとダメなとこ言ってくか」
「いえいえ大丈夫です!!本当に大丈夫だから言わなくていいです!!」


さっきまで凄い真面目なこと言ってたと思えば、今みたいに急に冗談めいたことを言い出すから調子は狂ってばっかりだ。しかも表情一つ変わらないから余計調子狂うんだよね・・・。

ほら、今も「こっちにおいで」なんて言いながら手招きしてるし。
表情が少し和らいで見えるのは私の勘違いかもしれないけど、調子狂うことには違いない。
それでも言われた通り、手招きされた大希の横に行ってしまう。

10年間ずっと好きだった人からのお誘いを断れるわけがないんだもの。

大希の横に座れば、金曜日みたいに抱きしめられる。
温かくて落ち着く香りで、このまま眠ることが出来たらどれだけ幸せだろう。

あぁでもその前に言わなければならないことがあるんだ。


「あの、大希」
「どうした?」
「こんな素敵な指輪ありがとう。私を選んでくれてありがとう」
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