再会は突然に
まだまだ伝えたいことはある。
この10年色々と溜まったことがあるんだ。

でもいざ言葉にすると、凄くありきたりになってしまう。
こんな言葉でちゃんと伝わってる?
もっと気の利いた言葉があればいいのに。

そう思いながら、背中に回した手に少し力を入れると大希は何も言わずゆっくりと私の髪を撫でる。
まるで分かってると言わんばかりに。

・・・まぁいいか、今日はこのまま抱きしめられていよう。
しばらくはこの温かさに触れることが出来ない。
今のうちに数ヵ月分を充電しておかなきゃ!


「あの、大希!」
「今度は何?」
「もうちょっとこうしててもいいかな?その、しばらく会えないから・・・いっぱい大希を充電したくて」


大希のことだから、片付ける事は全て片付けて後は帰国するだけって状態かもしれないけど、今までの疲れとかもあるだろうし、あまり引き止めるのも悪いなと思っていた。

でもこんな風に抱きしめられて、離れたくない気持ちが大きくなり過ぎて、ちょっとわがままを言ってしまう。


「風香のそういうとこズルイよな・・・」
「え、ズルイ?」
「うん、頑張って抑えてるのに可愛く甘えてくるのほんとズルイ」


そう言われた瞬間、私の視界は上を向いていた。
でも見えるのは見慣れた天井じゃない。大好きでこの歳まで忘れられなかった張本人。
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