再会は突然に
「仕方ないだろ、可愛いもんは可愛いんだから」
「そんなわけ」
「あるから可愛いって言ってる。あと期待云々だけど、風香は考えなくていいよ。俺が勝手に出すから」


「だから全部俺に委ねて」と耳元で囁かれて、暑くもないのにブワッと体中から汗が出た。冷や汗かもしれない、いやきっとそうだ。
とにかく落ち着け私、このままだと心臓がいくつあっても足りないなんてことになり得る。

とりあえず深呼吸!落ち着くには一番いい方法だよね!

うんうんと自己納得して、ゆっくり静かに深呼吸をしてクールダウンに集中する。
しかしそのクールダウンを、大希は簡単にさせてくれるほど優しくない。


「風香、心臓バクバクし過ぎ。いざ愛し合うってなった時、心臓止まるよ」
「あ、愛し合うって・・・!」


未経験ながら知識だけは年相応にある。頭の中に男女が裸で抱き合う姿が浮かんでしまった。

だから!本当この人はなんてことをスラスラと口走るのよ!!

そんな文句も言えるわけなく、口をパクパクとさせることしか出来ない。対する大希は、何が楽しいのかクスクスと小さく笑っているではないか。


「想像した?」
「想像なんかしてないもん!大希がそういうこと言うのが悪い!」


必死で浮かんだ姿を消し去りながら、抱きしめられているのをいいことに大希の背中をポカポカと叩く。もちろん反抗の意を込めてだ。
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