再会は突然に
あぁダメだよ、ズルイ、ズルすぎる。
過去への嫉妬とか、諸々吹き飛んでしまったではないか。

残ったのは愛しい気持ちだけ。

そもそも愛するから、だなんてズルイに決まってるじゃんか!
約10年も未練がましく忘れられなかった本人から言われたら、本当瞬殺だから!!


「大希の方こそズルイよ。そんなこと言われたら、何も言えなくなるし許すしかないじゃんか」
「なら良かった」


恥ずかしさで項垂れる私とは逆に、抱きしめている大希はどこか楽しそうである。

こっちが勝手に振り回されている感が否めない。あぁそれか手のひらでコロコロとされている感でもいい。
とにかく、完全に向こうのペースだ。

そんな大希に向かって「意地悪」と呟くと、「ふーん、じゃあ俺のこと嫌い?」なんて聞いてくる。


「好きだもん、昔から、ずっと」


そう言うと大希は、優しく頭を撫でながら「俺もだよ」と言った。

抱き寄せられている腕の中で、静かに目を閉じる。

好きなのは、きっと高校の出会った頃から。自然消滅した時だって。社会人になってからも、もう一度貴方に出会ってからも。

それから貴方ともう一度想いを通わせても、変わらず恋をするんだと、愛しい人の腕の中で強く思った。
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