初恋にふさわしい人を待っている。
始まりは突然訪れた
「おはようございます。前から話していましたが明日から私は産休に入る為、その間担任をしていただく先生を紹介します。秋月先生、入ってください」

春から高校1年生になり、2ヶ月経った今でも、私はまだうまくクラスメイトと打ち解けられずにいた。そんな時、唯一話せるようになった担任の先生も明日からいなくなってしまう。いつか王子様が迎えに来てくれると信じているけれど、さすがに一人も話し相手がいなくなるというのは辛い。絶望に染まった私は机にうなだれた。

「秋月悠人です。よろしくお願いします」

代わりの先生はどうやら男の人らしい。しかし顔を上げる気にもなれず、そのまま自己紹介を聞き流していると、突然頭に衝撃が走った。

「居眠りはダメですよ」

何が起きたのか分からずはっと顔を上げると、にっこり笑った男の人が丸めたノートを持っていた。

「す、すみません」

「分かればよし」

どうやらこの人が新しい先生らしい。今度こそきちんと顔を見ようと背筋を伸ばせば、それに満足したのか先生はさっきとは違った柔らかい笑みを見せた。

その時、外から入ってきた風がその先生の髪を揺らし、太陽の光が透けて髪の毛が金色に見えた。茶色い髪だったはずなのに、私の目にはそう映った。それに加えて鋭い瞳とは正反対な印象を受ける優しい口調。口元のホクロがセクシーで。

「あっ……」

恋に落ちる音がした。


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