初恋にふさわしい人を待っている。
朝のホームルームが終わり、1時間目が始まるまでの間、新しい先生––––秋月先生はクラスの女子から囲まれていた。

「先生何歳ですか!」

「血液型は何ですか!」

「甘いものって好きですか!」

「彼女はいるんですか!?」

必死に先生のプロフィールを聞き出そうとする女生徒達は、すごく滑稽に見えた。その様子を、先生本人はにこにこと優しげな表情で見ていた。ご丁寧に質問にも答えている。

「彼女はいないです」

「じゃあ私立候補しようかなぁ」

1人の女生徒の声を皮切りに、次々と手が挙がる。

「ずるい私も!」

「私だって!」

冗談なのか本気なのか今いち分からないトーンで女子達は騒ぐ。

「私だって……」

はぁ、とため息を吐く。

本当はあの女生徒に混ざって先生と関わりたい。でも、そんなことをしてもただのいち生徒にしか見られないことが分かっていた。だから、先生に私しか見えないと思わせるようなアプローチをしなければならない。どうすればいいんだろう。

悶々と悩んでいると、パチリ、と秋月先生と目が合った。ふっと私に笑いかけ、また女生徒の方へと視線を落とした。たったそれだけのことなのに顔中が熱くなる。脈は少なからずあるんじゃないかと思ってしまう。どうして私を見たのかは分からないけれど、何でもいい。秘密のアイコンタクトみたいですごくドキドキした。
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