初恋にふさわしい人を待っている。
「で?俺のこの口調に何か文句ある?」

挑発的な視線を寄越され、言葉に迷った。

「文句は…ありません。ただ、どうして今は敬語じゃないのか気になっただけです」

模索して言葉を選び、先生の逆鱗に触れないよう努めた。

「特に理由はない。以上」

「そ、うですか…」

「まぁでも、お前以外に崩す気はないな」

「えっ、それってどういう……」

「だってお前、友達いないだろ?」

どうしてそのことが知られているのだろう。

言葉の真意を確かめる前に、先生が私のことを暴く。

「いない、ですけど…それが何ですか」

「ま、自分で考えてみれば?」

そう言って私の頭に手を置き、くしゃりと撫でた。その時の先生の顔は見えなかったけれど、何故か笑っている気がした。

「せんせ……」

はぐらかさずに答えて欲しくて、呼ぼうとした時に先生に遮られる。

「週に1回…そうだな、毎週月曜日昼休みここに来い。どうせ暇してるだろ、雑用が特技の東雲由紀子ちゃん」

一目惚れってずるい。むかつくと思っていても、名前を呼ばれただけでこんなにも嬉しいなんて気づきたくなかった。

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