Prologue


手に持っていたルーズリーフの束を眺める。

歩きながら何かするのは行儀が悪いけど、テスト前だし勉強しなきゃと思って、持っていた。

ノートはどうせ荒らされてしまうから、要点だけを別のルーズリーフにまとめておいたのだ。

それなりの点がとれれば、それでいいから。


橋の真ん中、歩道の少し膨らんだトコロ。

もう少し端によって川を見ようと思ったとき、びゅうっと一つ、風が吹いた。

思ったよりも強い風。

軽く掴んできたルーズリーフが、するりとわたしの手からぬける。

目で追うと同時に、飛んでいった方へ足をすすめる。

紙束は橋の真ん中のほう、道路の中央に落ちた。

無意識に手を伸ばしていたから、気づいたらわたしは道路の真ん中に立っていた。

広い道のわりになかなか車通りが少ないから、油断していた。

油断していたというか、気付かなかった。


紙束を拾い上げようとして、やっと自分の立ってる場所を理解したときには、もう遅くて。

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