Prologue
顔を上げる。反射的に右を見る。
近付いてくる、自分よりもはるかに大きなトラック。
クラクションとブレーキの音が耳をつんざく。
「…あぁ、」
諦めたような声が、口から漏れた。
こんなにもうるさいのに、わたしの声だけはよく響いて聞こえた。
逃れることはもう不可能。
走っても何をしても間に合わない。
それが、分かったから、わたしはただ、その場に立ち尽くした。
…いや、わかってなくても、そうしていただろう。
ラッキーだとさえ、思ってしまったんだから。
目を、閉じる。
風が頬をかすめてくすぐったい。
次の瞬間襲い掛かってきた痛みに、わたしはあっさり意識を手放した。
悔しさとか怒りとかそういうものは何もなくて、あまりに突然だけど、でも終わることに、むしろ安心した。
それなのに。
_…次に目を覚ましたとき、わたしはまたその橋の上にいた。