Prologue
「…ひま、だな…」
退屈すぎて死んでしまいそう。
…あ、もう死んでるんだっけ。
やることが何一つないものだから、いつも橋の上から動かずに、川と空を眺めているわけだけど、そろそろ飽きてきた。
そりゃあ、数日間もおんなじ空と川を見つめてて、飽きないはずがないか。
日が傾き始める。
今日は少し薄い黄色の光が、川を照らしている。
これはこれで、やっぱり、綺麗、かな。
電車が、走っている。
橋の真横、わたしのいる方とは向こう側には線路があって、ガタンゴトンと音を立てながら電車が走っている。
あまり電車を使わないものだから分からないけど、多分、結構な頻度。
あれこれいろんな種類の電車が走ってるみたいだけど、あいにく、興味はない。
風が吹いている音はするけれど、風を感じることは叶わない。
触れようと思えば物に触れることはできるんだけど、持ち上げたり動かしたりはできないみたい。
基本、何も考えず触れようとすればすり抜けてしまう。
でも、生きている物には、どう頑張っても触れられない。
これが、ここ数日間で分かったこと。