溺愛王子様のつくり方
アイツが言ってた六丁目のシェアハウス。

俺はその場所を前から知ってる。
アイツがいる場所だったからな。

なんでも、母親との思い出の場所とかいって。

電話で声を聞いた瞬間、それが環だってわかった。



「早く行かねぇと……」



アイツは、ちとせを俺に返してくれなくなる。

どうか、ちとせが俺をみてくれますように。
ちとせがまだ俺を想っててくれますように。
手遅れじゃありませんように。

そう願いながら、ハンドルを握った。

ハンドルを握る手が震えてるのがわかる。
情けねぇけど、怖くて仕方ない。

誰かを失うのが怖いなんて、そんな感情もうないと思ってた。



「俺たちがもっと違う風に出会ってたら」



なんて何度も考えた。

でもな、思いつかねぇんだよ。
ほかの出会い方なんて。



俺は俺で。
ちとせはちとせで。

俺が復讐のためにあの学校に行かないと出会わないんだよ。
だって、俺があそこでちとせに出会うように仕組んだんだから。

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