溺愛王子様のつくり方
「タマー、こっち持ってくれる?」



たどり着いたシェアハウス。
庭先から見える窓に映るちとせと環の姿。

環のことをタマなんて呼んで、懐いてる様子のちとせにグッと拳を握りしめる。



「あ……」



環が一瞬外をみた。
目が合ったけど、アイツはにやりと笑って「ちとせ」と優しく名前を呼ぶ。

呼ばれたちとせは、環に微笑んで
環はそんなちとせの頭を撫でる。

無理だった。
そんな光景ずっと見てるなんてできなかった。
ありえなかった。

たとえ、環がちとせのことを可愛い妹だと思ってたとしても。
ちとせにとっては突然現れた1人の男だ。

そんな男に触れられるちとせを見ているなんて無理だ。



「ちとせ!」



玄関で靴を脱いで、即食堂に行ってちとせの腕を掴む。



「ま、学くん……」



俺に腕を掴まれたちとせは、驚いた顔で俺をみる。



「もういいだろ。戻ってこいよ」

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