溺愛王子様のつくり方
「あ……」



大人の男の人なんて、おじいちゃんと執事の池田とかしか見たことがない俺は何も言えなくて俯いてしまう。



「いきなりでびっくりするよな?ほら、環も」



隣にふくれっ面で座ってる男の子を、立ち上がらせる。



「うるせーよ」



この人がさっきお母さんが言っていたお兄ちゃんなのだろう。

ずっとむすっとした顔をしてる。



「お母さん……怖い」



正直な感想だった。
そんなに年は変わらなそうだけど、怒ってるかのようなその顔に俺はお母さんと服の裾を引っ張る。



「はは。環、弟になるんだから優しくしてやれよ」



ぽんっと頭を撫でる。



「あ……」



正直、羨ましかった。
あんなふうに包み込んでくれるようなお父さんがいて。



「優しくすればいんだろ。わかってるよ」



頭に乗せられた手を振り払って、俺の前に歩いてくる。



「俺、環。小学1年生。お前は?」


「学。5歳」



小学1年生だというのに。
たった2歳しか違わないのにすっごくお兄さんに見えた。

これが俺と環とそして、親父との出会い。
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