溺愛王子様のつくり方
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「父さん、病院いくの?」


環が日曜の昼間に出かけて行く、お父さんに向かって聞いていた。


俺も小学2年になったころ。
頻繁に休みの日に出かけるお父さんの姿をみていた。

〝病院〟という言葉に、もしかしてお父さんはどこが悪いのだろうかと不安になった。



「環も行くか?」


「え!?いいの!?」



環はぱぁっと顔を輝かせて頷いている。

病院にそんなに行きたいなんて環は変わっているなと子供ながらに思ったものだ。



「もうゆかりも長くないから。環も会っておきたいだろ?」


「うん……うん……」



さっきまで嬉しそうにしていた環の手はどこか震えてるように見えた。

気になったんだ。
でも、俺も行きたいなんてこと言えるわけもなく。


──……だから、俺は



「おい、池田。お父さんと環のあとつけてよ」



俺についてる執事の池田に車を出すように頼んだ。

この時行ってなければ、いろいろと道を踏み外さなかったかもしれない。
でも、アイツにも出会ってなかった。

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