溺愛王子様のつくり方
「学、見るなよ」



環に引っ張られて、俺は病室に背を向ける形になる。



「なんでだよ、あれは俺のお父さんだよ」



まだ信じたかった。
俺のことを本当の息子だと思ってくれてると。

だから、環の制止も振り切って振り向いた。



「あ……」



振り向いて、目に入ってきたのは横たわる女性とキスをしてるお父さんの姿。



「は?」



いくら幼いとはいえ、キスがなんなのかわかってる。

俺のお母さんとお父さんがするものであって。
あの女の人とお父さんがらするものじゃない。



「だから見るなって言ったじゃん」


「なんで?なんで?お父さんは、俺らのおとうだよ?」


「お前、バカかよ」



一層低い環の声が頭上から聞こえる。



「え?」


「俺とちとせの父さんだよ。勘違いすんじゃねー」



そのまま何事もなかったかのように、病室の中に入っていく環。


環の言葉が俺の胸に刺さった気がした。
< 119 / 189 >

この作品をシェア

pagetop