溺愛王子様のつくり方
〝別に。たまにはちとせの手伝いでもと思ってね〟


〝ありがとうと言っとく〟



なにか裏があるに違いないけど。
普段ならこんなこと地球がひっくり返っても言わない。

燿くんが冷たいとかじゃない。
燿くんは多忙なのだ。

クラスのことも生徒会のこともやっていて。
あげく、両親が仕事で遅くなるから兄弟の面倒も家のこともほぼ燿くんがやっている。

いつも効率を考えてる燿くんが、こんな手伝いをするなんて。
素直に受け取れるわけなんてない。



〝言っとくじゃなくて言えよ〟


〝裏がありそう〟



普段、一緒にいるときにもこんなやり取りをしているなとふと思う。
こうしてLINEでもしてるあたしたちは非常にバカだと思う。

でも、誰かとこうして繋がっていられることに嬉しく思う。

教室を見渡すと、みんなが机をくっつけたりしてお母さんの手作り弁当や購買のパンなどを食べてる光景が目に入る。



「屋上行こうかな」



誰にも聞こえない声で呟いて、自分の席から立ち上がる。

聞こえたところで、誰も拾ってはくれない言葉だけど。

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