溺愛王子様のつくり方
「付き合って、ないですよ」



この質問は何度もいろんな人に聞かれてきたことだ。
なにも珍しい質問ではない。

それなのにどうしてショックを受けてるんだろう。



「そっか、それならよかった」


「……え?」



遊佐先生の発した言葉に首を傾げる。



「あー、何言ってんだろね。俺」



目の前にいた先生は、自分の髪の毛をかきあげる。



「先生は、彼女とかいないんですか」



なんでこんな質問をしたのか、わからない。



「いないよ」



どうしてこの答えに胸が踊るのかもわからない。



「そう、ですか」



なぜだか緩みそうになる頬を抑えながら、フェンス際へと歩く。



「ちとせちゃん」


「……っ!?」



急に呼ばれた名前にびっくりしないはずがない。



──ドキン、ドキン
胸の高鳴りが止まらない。



「俺のことも名前で呼んでよ」


「ま、なぶ、くん」



燿くん以外の名前を呼ぶことなんてないから、しどろもどろになってしまう。

でも、名前でよばれたこと。
そして、名前で呼べたこと。

そのことに頬が緩まないはずなんてなかった。

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