溺愛王子様のつくり方
「失礼します」



放課後。
田代先生の準備室に燿くんと二人、入っていく。



「あれ、ちとせちゃんだけだって聞いてたけど!霧島もきたんだ」



机の上の資料を片付けながら、遊佐先生が学くんがあたし達を見る。


〝ちとせちゃん〟
そう言われたことで心のなかがふわふわして仕方ない。



「おい、お前なんで名前なんて呼ばせてんだよ」



横にいる燿くんは不機嫌そうにあたしに耳打ちをする。



「呼ばれたから……」


「ふーん」



呼んでいいとも何とも言ってないけど。
でも、やっぱり嬉しくてなんだかくすぐったい。



「俺も手伝いにきたんですよー」



学くんの質問から少し間をおいて、燿くんが答える。



「ふーん。嫌な予感、したわけね」


「おまっ……」



学くんと燿くんのあいだにはなぜだか、火花が飛び散ってるように見える。



「あ、あのう……田代先生からのやつは」



そんな空気に耐えられず、恐る恐る学くんに問いかける。

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