溺愛王子様のつくり方
──ピッピッピッピッ



外に落ちていった窓を見つめてるとき、心電図の機械音が慌ただしくなる。



「母さん!?」


「ちょっとどいてください!」




母さんに駆け寄ろうとした俺の腕を医者が引っ張る。



「母さん!」


「学、しっかりしろ」



足がおぼつかなくて、フラフラしてる俺の両肩を環が掴む。



「お前はよく平然と……あ、本当の親じゃねーか」


「バカ言うなよ、俺だって……」



グズッと聞こえてきた、環の鼻の音。



「なんで、母さんなんだ。なぁ、環」


「俺だって、そんなのずっと考えてる……どうせなら俺が代わりたい」



──じゃあ変わってくれよ。
その言葉は飲み込んだ。

俺の肩を掴む環の手が震えていたから。



──ピーーーーッ



無常な音が部屋に鳴り響いたと同時にバタンとドアが開いて親父が入ってくる。



「遅せぇよ」



もう、ここに母さんはいない。

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