溺愛王子様のつくり方
「鈴野どしたー?」



放課後。
学くんの元に行こうと、準備室を訪れる。

すると、いままで1度だっていなかった田代先生があたしを出迎える。



「まな……遊佐先生は?」


「今日はきてないぞー」


「え?」



田代先生の言葉に、今日1日見ていないことに納得をする。



「なんだー?最後だから挨拶か?」


「そんなとこです」



本当のことなんて言えないから。
だから、どうして来ていないかなんてことも聞けない。



「俺が伝えといてやるよ」


「あ、はい。じゃああたしは生徒会室行きます」



田代先生に懸命に笑顔を作って、教室から出る。



「なんで……?」



あたしは、スマホを耳に当てて学くんに電話をかける。

でも、無機質な音が鳴るだけで一向に出てなんてくれない。



「あたしたち、変わるはずだったよね……?」



金曜日の学くんを思い出しても、ずっとずっと優しくて。
それが嘘だなんて思えない。

< 150 / 189 >

この作品をシェア

pagetop