溺愛王子様のつくり方
「じゃあな、環」


「おお。ちとせ、傷つけられたら連絡しろよ」


「はは、うん」



全然カバンから出してなくて、片付けが簡単だったあたしと荷物。
学くんがあたしの部屋から持ち出して車に乗せたので、結城さんに挨拶をしたりしてから車にあたしも向かった。



「環はまたどっか行くのか?」


「うーん。そろそろ落ち着こうかなーとか考えてはいるけどね。妹も近くにいることだし」


「親父のとこ行けよ。待ってるぞあの人」



あたしは知らない二人が家族として生きてきた歳月。
お父さんのこともタマのことも嫌いだったっていうけど、話を聞く限りそうは感じられなかった。



「俺、普通に働ける気しねーもんな」


「まぁ、環が働いてるとこはたしかに想像つかねーな」



おかしそうに笑ってる学くん。



「タマはどうやって生活してるの?」



ふと、疑問に思ったことを聞く。
この1週間、シェアハウスで見てきたタマはどう見ても働いてるようには見えなかったから。

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