溺愛王子様のつくり方
「ずっと好きでいてくれてありがとう」



そのままあたしの背中に腕を回す。



「学くんも……ありがとう」


「正直、気持ち抑えんのまじでキツかった」


「え?」


「お前は気持ち隠さねぇし」



──人の気持ちも知らないで

と続けて、腕を解いた学くんはあたしの顔を見つめてくる。



「……っ」



今日何度目かわからない。
胸の高まりを感じて、あたしは学くんの胸に自分の顔を押し付ける。



「俺さ、写真でみたときは憎しみしかなかったんだ」



森ノ宮に教育実習に行くことを決めたときのことを言ってるのだろう。

あたしをぎゅっと抱きしめて、ぽつりぽつりと話だす。



「うん」



あたしはその言葉のひとつひとつをきちんと受け止めたくて。
ただ相槌を打つ。

ほかの言葉なんて出てこない。
大切な言葉を今度は逃したくないから。



「あの日。体育館で壇上からお前を探した。1発で分かったんだ。この子だって」

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