溺愛王子様のつくり方
「そうなんだ……」


「ほら、目が合ったって言ったろ?多分あの時から俺はちとせが気になって仕方なかったんだ。恨んでたはずなのに」


「……っ」



あたしもだった。
あの目があったかもしれないと思ったときから。
学くんにドキドキして仕方なかった。

同じ瞬間、同じ気持ちになったあたしたち。
想いが重ならないはずなんてなかったんだ。



「実習最後の日。母親が危篤になって、ちとせに会いにいけなくて。俺がちとせを受け入れようとしたから、罰が当たったんだって思った」


「罰、なんて……」



そんなはずがない。
だって、絶対にお母さんは学くんのことを愛していたはずだから。



「だから、もうちとせに会わないと決めたんだよ」


「そっ……か」



ありきたりな返事しか出てこない。
自分のことを言われているのに、誰かほかの人の話をきいているみたい。



「でもさ、それからもずっとちとせのこと気にしてた。ストーカーかな、俺」



おちゃらけたように言う学くんだけど、反対にあたしの瞳には涙が溢れてくる。

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